閑栖明堂光洋和尚挨拶


住職退任挨拶

この度小衲は、四大不調を来し、七月三十一日をもって恩林寺住職を辞任することになりました。既にご承知のとおり増殖性硝子体網膜剥離という大変手術の難しい疾患で四度の手術を行い回復を願っておりましたが、望みかなわず失明を余儀なくされ今日に到りました。それ以来、集中力、気力に欠け、筆を執るのも難儀し、聴覚、発生にも影響し始め、このまま続けると法務に支障を来す恐れがあるとの判断と、師弟の関係上、師は弟子を育てるとの観点からして丁度よい機会ではないかということで、住職を辞任する決意を致し役員会に諮り承認されました。

奇しくも私、今年満六十歳の還暦を迎えました。光陰矢の如し何度もブレーキを踏む機会はあったのですが、そのつど忘れてしまい何か急いでここまで来たような気がしてなりません。これからは穏栖しゆっくりと四季折々に触れ有意義に楽しく時を過ごしてまいりたいと思っております。

後任には貴洲副住職が就任されました。まだまだ若輩にて皆様方のお力添えが必要であります。どうぞ今後ともより一層のご指導ご法愛を賜りますよう伏してお願い申し上げます。

振り返ってみれば、昭和五十四年九月一日、大本山建長寺より恩林寺住職の拝命を受けて、以来二十八年の永きに亘り檀信徒皆々様には大変お世話になり、心よりお礼申し上げます。

特に、晋山の折には森下隆司様、幸子様ご夫妻には多大なご寄捨を賜り深く低頭し衷心より御礼申し上げます。本堂、書院、客殿と次から次へと復興されました。それもこれもすべて檀信徒の皆様が結集した大いなる法力と確信しております。皆さんと共に歩んで来た二十八年間ありがとうございました。最後に恩林寺の更なる発展と檀信徒各家の益々のご繁栄を念じ退任の挨拶と致します。

                     平成十八年七月 盛夏

                                   前田 光洋 九拝